沫雪の ほどろほどろに 降り敷けば 奈良の都し 思ほゆるかも  大伴旅人
私が懐かしく思い出される場所は、この歌の雪の場面とは正反対で、真夏の日々が続くシンガポールです。小学3年生まで住んでいました。雪がはらはらと降る光景を見ると思い出す、と歌にはありますが、私は夕方ごろにざあと降る雨を見るとたまに懐かしさを感じます。スコールですね。他にも、からっと晴れた夏の日のお昼やふとした瞬間ににおう懐かしい香りなど、所々で思い出されます。この間、シンガポール料理店へ行くことがありました。そのお店のにおいや雰囲気を感じ、注文したチキンライスを食べた時、とても泣きたくなりました。だれにでも思いをはせる都があると思います。この歌はその心がそのまま表現され、とても共感できます
「選評」 筆者は、大伴旅人が幻に見た大和の雪と、自分が幼少期に見たシンガポールのスコールは同じだという。記憶を想起させるという点において。旅人もびっくりでしょう。でも、そこまで万葉歌を自分に引きつけて読めたことには拍手を送りたい。と同時に、それが歌というものを追体験して実感することなのだ、と思うのです。